法人成りに必要な手続
現在、個人事業主として事業を営んでいる方のうち、今後、法人成りを行うべきか否かについて、一度は検討することと思います。そこで、法人成りを検討している個人事業主の為に、法人成りに必要な手続きをまとめましたので、参考にしていただけると幸いです。
まず、法人成りとは、個人事業主の方が、会社を設立して、既存事業を引き継いで行っていくことをいいます。この法人成りを行うときは、次のような手続きが必要となります。
法人成りに必要な手続一覧
法人成りに必要な具体的な手続
1.会社設立手続
(1)基本事項の決定
商号、事業目的、本店所在地、事業年度、資本金、出資者、機関設計等を決定する。
(2)定款の作成
定款を作成する。但し、株式会社の場合、公証人役場で認証を受ける。
(3)資本金の払い込み
払込証明書を入手する。
(4)設立登記書類の作成及び設立登記の申請
設立登記申請書等の書類を作成し、管轄の法務局に設立登記の申請をする。なお、登記申請手続き等に不備がなければ、提出後、1週間ほどで登記が受理されます。
2.会社設立後の手続(税務関連)
《税務署》
(1)法人設立届出書
会社設立後2カ月以内に提出
(2)青色申告書の承認申請書
会社設立後3カ月以内と最初事業年度の末日のうち、いずれか早い日までに提出
(3)給与支払事務所等の開設届出書
給与支払事務所等を設けた日から1ヶ月以内に提出
(4)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
特例を受けようとする月の前月末
(5)棚卸資産の評価方法の届出書(任意)
確定申告の提出期限までに提出
(6)減価償却資産の償却方法の届出書(任意)
確定申告の提出期限までに提出
《地方公共団体(都道府県税事務所または市区町村役場)》
(1)法人設立届出書
地方公共団体により提出期限は異なります
上記の各手続きが、必要か否かは、会社の状況により、異なりますので、ご注意ください。
3.事業用の資産・負債の引継手続
会社の設立登記の手続きが完了したら、個人事業主の方が所有していた資産・負債を新会社に引き継がせる手続きをおこないます。個人事業主の資産・負債のうち、どの資産・負債を会社が引き継ぐかについては、事業主と会社との間で任意に決めることができます。
なお、個人事業主の資産・負債を引継ぐ際、事業譲渡契約書、財産目録、株主総会議事録などを用意することについても検討しておきましょう。
4.各種契約の名義変更
引継ぐ財産も含め、様々なものの名義変更が必要になります。以下に名義変更が必要となる主な契約を例示します。
・銀行口座
・事務所や店舗、工場、駐車場などの賃貸借契約
・事業用車両
・電話、電気、水道、ガス、リース契約、保険契約など
・事業用資金の金銭消費貸借契約
・取引先との契約や売掛金の入金先の変更
5.個人事業の廃業手続(税務関連)
個人事業を廃止する手続きは、各所に書類を提出する必要があります。以下に、主な廃業手続と提出期限を記載します。
《税務署》
(1)個人事業の開業・廃業等届出書
廃業後1カ月以内に提出
(2)青色申告の取りやめ届出書
3月15日までに提出
(3)給与支払事務所等の廃止届出書
廃業後1カ月以内に提出
(4)事業廃止届出書
消費税の課税事業者が事業を廃止した場合、速やかに提出
(5)所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
・第1期分および第2期分の減額申請は、その年の7月1日~7月15日
・第2期分のみの減額申請は、その年の11月1日~11月15日
《地方公共団体(都道府県税事務所または市区町村役場)》
(1)事業開始(廃止)等申告書
都道府県または市区町村により提出期限が異なる。
6.個人事業の確定申告
個人事業を廃業した場合、廃業した年の事業所得を確定申告する必要があります。最終年度の確定申告も所得税は翌年3月15日、消費税は翌年3月31日までに申告する必要があります。なお、事業税については、廃業後1ヶ月以内に、申告をしなければなりません。ただし、事業主控除の範囲(290万円の月割額)ならば申告・納税の必要はありません。
最後に
法人成りのメリット・デメリットについても、十分に検討する必要があります。特に、事業用の資産・負債の引継手続や確定申告について、専門的知識を必要としますので、法人成りの検討から実行に至るまで、時間的節約や節税等の観点から、専門家を活用することが有益であると考えられます。